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借地非訟とは?4種類の申立てと介入権を徹底解説

借地非訟とは?4種類の申立てと介入権を徹底解説

「増改築したいけど、地主が承諾してくれない。」

「借地権の売却(第三者への譲渡)をしたいけど、地主が承諾してくれない。承諾料が高すぎる。」

このような借地権の条件変更等にまつわるトラブルは非常に多く、当事者の話し合いでは解決しないケースがしばしばあります。

そんなときに行われることが、借地非訟です。

この記事では、少しややこしい借地非訟について分かりやすくまとめました。

借地非訟とは

借地非訟(しゃくちひしょう)とは、借地借家法・借地非訟事件手続規則で規定される法的手続きです。

通常、借地人(土地の借主)は、借地上にある建物を

  • 増改築
  • 建て替え
  • 売却・譲渡

する場合、必ず地主(土地の所有者)の承諾を得なければなりませんが、承諾を得られないケースも多々あります。

そんなとき、地主に代わって、裁判所が「許可」する手続きが”借地非訟”となります。

借地非訟の種類

借地非訟は、どのような場面でも使えるわけではありません。

借地非訟として取り扱うことのできるケースは、

  1. 借地条件変更申立事件
  2. 増改築許可申立事件
  3. 土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件
  4. 競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件

の4種類となります。

1. 借地条件変更申立事件

借地契約では、借地上の建物について

  • 種類(居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅など)
  • 構造(木造、鉄骨、鉄筋コンクリート造など)
  • 規模(床面積、階数、高さなど)
  • 用途(自己使用、賃貸、事業、教室など)

などの条件を設けているケースがあり、変更するには地主の”承諾”が必要となってきます。

しかし、地主が承諾をしない。

そんなとき、借地人は”借地条件変更の申立”を行うことができます。

裁判所が相当と認めれば、借地条件の変更が可能となります。

第17条 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。

出典:借地借家法17条1項

2. 増改築許可申立事件

借地契約では、借地上の建物を

  • 増改築
  • 建て替え
  • 大規模修繕

する際、地主の”承諾”が必要と定められているケースが多々あります。

しかし、地主が承諾をしない。

そんなとき、借地人は”増改築許可の申立”を行うことができます。

裁判所が相当と認めれば、増改築等に関して、地主の承諾に代わる許可を得られます。

2 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

出典:借地借家法17条2項

3. 土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件

借地人が借地上の建物を「第三者(買い主)」に

  • 譲渡(売却)

する際は、借地権も移転することになるため、地主の”承諾”が必要となります。

しかし、地主が承諾をしない。

そんなとき、借地人は”土地の賃借権譲渡又は転貸の許可の申立”を行うことができます。

裁判所が相当と認めれば、第三者への譲渡(売却)に関して、地主の承諾に代わる許可を得られます。

借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

出典:借地借家法19条1項

4. 競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件

借地権付き建物が

  • 裁判所の競売
  • 行政庁の公売

により「第三者(新しい借地人)」に落札されたら、借地権も移転することになります。

そうなれば、第三者は、地主と「借地契約」を終結する必要が生じます。

しかし、地主が借地契約を承諾をしない。

そんなとき、第三者(取得者)は”競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可の申立”を行うことができます。

裁判所が相当と認めれば、借地契約に関して、地主の承諾に代わる許可を得られます。

第20条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。

出典:借地借家法20条1項

介入権

先ほどの

  • 3. 土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件
  • 4. 競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件

により、借地権が「借地人(現在の所有者)」から「第三者(新しい所有者)」に移転することになった。

そんなとき、地主は、裁判所に”借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受の申立”をして、借地権(建物)を優先的に買い取る権利を得ることができます。(これを「介入権」と言います。)

ひとたび「介入権」が行使され、裁判所の決定がなされると、借地人はこれを拒むことができません。

主な特徴

  • 裁判所が定めた期間に限って、申立ができます。
  • 原則、裁判所が定めた価格で取得することになります。

3 第1項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

出典:借地借家法19条3項

最後に

ここまで、借地非訟について詳しくお伝えしましたが、借地非訟は最終手段と思ってください。

というのも、借地非訟を実行するには、

  1. 借地人が裁判所に申立書を提出する。
  2. 裁判所が審問期日(事情を詳しく問いただす日)を決め、申立書を地主に郵送する。
  3. 審問期日を開き、当事者(借地人と地主)から事情を聞く(必要に応じて、第2回、第3回と審問期日が開かれる。)
  4. 裁判所が鑑定委員会に許可の可否、承諾料額、賃料額、建物および借地権の価格等について意見を求める。
  5. 鑑定委員会が当事者の立会のもと、現地を調査する。
  6. 鑑定委員会が裁判所に意見を提出する。
  7. 裁判所が鑑定委員会の意見について、当事者から意見を聴き、審理を終了する。
  8. 裁判所が決定書を作成し、当事者に送付する

という手順を踏む必要があり、約6~12ヶ月という多大な時間と労力、そして、場合によっては高額な弁護士費用も発生し、地主との関係も確実に悪化します。

そして、借地権を第三者に売却する際、この”地主との関係”というのは、重要な意味を持ちます。

なぜなら、地主との関係が好ましくない借地権は、

  • 借地権を転売するとき
  • 銀行から融資を受けるとき(銀行は地主からの「融資承諾書」を求めるケースが多い)

に地主から「許可」を取れないリスクが高いからです。

あなたは、トラブルが発生している借地権を購入したいですか?

普通、土地の条件が同じであれば、地主との関係が良好な借地権を選ぶはずです。

そのため、借地非訟という強硬手段を使い、地主との関係が悪化してしまった借地権は、たとえ、裁判所の許可がとれたとしても、なかなか買い手が見つからず、価格を下げざるをえない状況になってしまいます。

だからこそ、安易に借地非訟に持ち込むのではなく、まずは、話し合いで解決することが大切です。

そのために、専門家の意見を聞き、正しい知識と相場観(借地権の価値)を身につける。

第三者への譲渡だけでなく、地主による借地権の買取など、広い視野で解決方法を模索し、借地人と地主の双方が納得できる条件を引き出すことが重要になってきます。

弊社では、借地権の条件変更等にまつわるトラブルを含め、借地権に関してお悩みの方のご相談をうけたまわっております。

「借地権付きの土地・建物を遺産相続した」「地代の値上げ要求された」「法外な更新料の請求された」など、借地権について、お困りの方はお気軽にご相談ください。